I AM A GOOD GIRL

以下のテキストは現代美術作家であり、展示会場「Art Center Ongoing」のスッタフでもある津賀恵さんによる展示のステイトメントです。

 この度Art Center Ongoingでは、八木恵梨 個展『I AM A GOOD GIRL (LIFE, SAVE, AH~)』を開催いたします。
本展は、八木が継続して取り組んでいる「ライフセーバー」シリーズ最新作となります。
八木はこれまで、妄想をドローイングによって展開し、ものがたり形式で保存する活動を続けてきました。
線描で極個人的な妄想にクリアな輪郭を与え、鑑賞者とその共有を試みると共に、展開したそれにさらなる奥行きを持たせるべく、映像や音声などの多様なメディアも活用しています。
「ライフセーバー」は、バイト先で先輩をライフセーバーと見紛うたという、作家の実体験から生まれたキャラクターです。
オレンジ色のダウンジャケットを着たその姿が纏う「ライフセーバー感」に一瞬で心を奪われて以降、八木は自身の妄想の産物である彼を、あらゆる方法で描き続けています。それは、ライフセーバーを魅力的な存在でいさせ続けるための実践であると同時に、ライフセーバーを描く自身の態度、資格を問い続ける、内省的な行為でもあります。
本展の主役は、このライフセーバーに色仕掛けをし続けるキャラクター「スイムキャップ」です。
スイムキャップは展覧会タイトルが示すように、 人格のない男性像であるライフセーバーに対して「良い子(good girl)」であり続けようとするキャラクターです。ライフセーバーにとって魅力的な存在でありたいと願うその存在は、自身の妄想から生まれたモチーフへ誠実であろうとし続ける作家の写し鏡でありながらもまた、八木の妄想でもあります。
「人類に何を残せるかと考えた時、自分の個人的なことが飛躍して変化していく、一事例になれたらいいと思った」という八木。
作家自身とキャラクターたちとの関係をも皮肉的に取り込み、一層複雑さを増してきた物語は、この先どのように変容していくのでしょうか。
会期中8月3日(土)には、スイムキャップに扮した八木自身も出演する「水泳帽を被って『I AM A GOOD GIRL』と言うライブ
」も開催されます。
「I AM A GOOD GIRL」とうまく発音できないながらも練習し続けるのは八木でもあり、スイムキャップでもあります。その二者の在りようを、観客は直接目撃することができるのかもしれません。
八木による変化してゆく物語を会場にて、存分にお楽しみください。

↓会場で流れていたアニメーション映像

〈I AM A GOOD GIRL〉